SMWSコードG7.19のテイスティング・プレビュー

SMWSコードG7.19のテイスティング・プレビュー

2021.07.28

「G7.19のテイスティング・プレビューが見たい」

ウイスキー業界30年の専門家のテイスティング・プレビューをご紹介します。

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目次

  1. SMWSコード:G7.19について
  2. 香りの構成について

1. SMWSコード:G7.19について

英国産業革命当時の香りとでも言いましょうか。

トップノートにまず入ってくるのは、ミシン油(機械油)の匂いやら、古ぼけた倉庫の埃っぽい匂いなど。

製造工場の空気を吸っている感じがする。

これらはモルトウイスキーが壜熟した時などにも時として現れる。

焼酎の熟成でも油っぽさとして現れる、リノール酸等ある種の油が酸化して生成するアゼライン酸エチルといったものが知られている。

この長期熟成のグレーンでは果たしてどこからその匂いが紛れ込んだかは不明である。

可能性としては長い間の伝統的な貯蔵庫の中での移香。

長年使用した古典的な連続式蒸溜機に蓄積した癖香。

などが考えられる。この産業革命の匂いは、早々に飛び去り薄れていく。

その後には軽快なウエハースのようなシリアル穀物香の上に乗って、バーボンやフルーティーや甘さが顔を出す。

小麦由来のアセチルピラジン等が、くどくない軽やかな粉っぽい甘さを演出し、

グレーン連続蒸溜でも残留する酢酸エステルのフルーティーさやバーボン樽由来の甘さが香味の配役となっている。

割水して一度口に含めば印象はごろっと変わる。

キャラメルのように口当たり柔らかく甘い。

28年もの熟成が生み出した究極の丸みある刺激のない口当たり。

ぜひ、オフィシャルノートも合わせてご覧ください。

G7.19のオフィシャルノートはこちらから

2. 香りの構成について

アルコール分子と水分子が時間の経過の中でクラスターを形成し、アルコール刺激を和らげるのでは?という物理モデルが沢山提案されている。

しかしどれが本当なのかはまだ分からないようで、これもロマンである。

筆者的には、以前赤星亮一先生が発表された理論がしっくりくるような気がするが。

つまりアルコール分子は水と交わる末端と交わらない末端があり、交わらない末端が鼻や口で刺激を与えると考えられる。

長い時間の熟成中に、アルコール分子のこの水に交わらない末端同士が複数誘引されてくっつき整列する。

するとその反対側は水と交わる末端だけで構成される。

つまりアルコール分子が整列して水と交わらない末端同士は向き合って密着するので、アルコール分子の向き合った2層の塊が水と交わる末端で覆い尽くされてコーティングされた状態が生まれる。

こうなると鼻や口に刺激が当たらなくなる。という考え。

熟成は奥深い。

また筆者の先輩である能勢晶先生によると、アルコールと水のクラスターを促進する因子として各種微量有機物が関与しているそうだ。

微量の有機酸やら香気成分がアンカーとなって、クラスター形成を誘導するそうである。

この現象がグレーンウイスキーやウオッカ、甲類焼酎など香味成分が少ない蒸留酒に顕著に確認されるようで、香気成分の多い蒸留酒では見分けにくい熟成現象のようである。

グレーンウイスキーは香気成分が少ないからこそ、数ある熟成原理の中で物理的なクラスターによる熟成がクローズアップされて知覚されるわけである。

一般に連続式蒸溜機は香気成分を取り除きアルコールだけに精製するものだが、このグレーンは連続式蒸溜機のルーツ、古典的なパテントスチルを使用していると思われるため、微量の香気成分群が残留しているようである。

だから先述したクラスター形成が、理論どおりよく進んだのではないだろうかと推理する。

以上。

ぜひこの機会に、G7.19をお楽しみください。


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