5大ウイスキーのジャパニーズウイスキーを業界30年の専門家が解説【ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ】【ウイスキー概論8】
2021.10.25
「5大ウイスキーのジャパニーズウイスキーの香りについて知りたい」
この疑問に、ウイスキー業界30年の専門家がお答えします。
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目次
1. 5大ウイスキーの「ジャパニーズウイスキー」の香りのプロフィール
竹鶴政孝が1921年スコットランド留学を経て日本に真のウイスキー造りを持ち帰ったところから中味の歴史は始まる。
モルトウイスキーは原料となる麦芽製造と麦芽からモルトを製造する2つのパートがある。
ワインの場合は原料葡萄の栽培と醸造をワイナリーで両方みることが多い。
保存性のない葡萄は収穫後直ぐに仕込まなければならないためだ。
一方ビールやウイスキーのように穀類原料の場合は大麦自体の保存性もあるし、大麦を浸麦・発芽・乾燥させた麦芽自体も保存性がある。
保存性があるとはストックできるということで大規模に業界が発展し始めると、麦芽製造業者とウイスキー蒸留業者が分離して効率を求めた。
当時竹鶴はピートを使用した大麦からの麦芽製造から糖化・醗酵・蒸留・貯蔵の全てのスコッチ製法を日本にもたらした。
それ故5大ウイスキーの中でスコッチスタイルであるのはジャパニーズだけである。
とはいえ当時の日本でスコッチタイプのウイスキーを根付かせるのは苦難の連続であっただろう。
まず日本人の嗜好に合わない。
彼の地のウイスキーは食事中とは無関係に、或いは食前に嗜むものであり、しかもオールドファッションやショットグラスにストレートで煽る飲用スタイルである。
日本はというと、それこそ蕎麦屋で蕎麦を食さずにアテだけで清酒を飲み倒す粋な江戸っ子も居たろうが、大方は食事中に飲酒するスタイルだ。
そうすると和食の繊細さにピートの風味やアルコール度数の強さは馴染まなかったろうと思われる。
また中味についていうと、竹鶴政孝は製造設備や製法を仔細に習得して持ち帰ったが、どうしても欠けていた視点もあった。
全能の神でないのだから当たり前だろう。
そのため竹鶴の製法を踏襲したニッカとサントリーのモルトの品質については1980年代の研究開発を待たなければイノベーションが起きなかったのも事実である。
当時はシングルモルトで飲むという習慣はなかったので、モルト原酒のピート香や少々の品質の欠点もブレンドによってカバーして商品化した。
グレーンとのブレンデッドウイスキーである。
それも水割りやハイボールにした時に丁度風味のバランスがとれるように品質設計を行った。
昨今ジャパニーズが海外での評判を導き出した一つの要因はこの割水した時に崩れないブレンド技術が繊細であったところにある。
ジャパニーズのアイデンティティとは何かという議論が随分なされてきたが、現在のジャパニーズブームから思うに日本の神秘的な文化や自然がウイスキーの精神性に与えるところが大きいように思う。
がその裏で海外のメーカーが注目しなかった、乳酸菌はじめ醗酵微生物の織りなす変化に1980年代以来メスを入れてきたのは、紛れもなくニッカとサントリーだ。
日本は古来、微生物による醗酵技術がお家芸だ。
味噌・醤油・酒と。
ここにこそ日本の神秘的イメージの縁の下の支えがなければと筆者は考える。
以上。
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